第35回 サタンクロス

オレ流超人批評
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魔界のプリンス・アシュラマンの師匠。優しさを捨て去った彼の、知性チームでの役割とは?
出身魔界
超人強度4100万パワー
必殺技トライアングル・ドリーマー
ミラクルシーツ
ブレイクダンスシュート
主な戦績ザ・ニンジャ○
アシュラマン△
キン肉マン●

 格闘マンガにおいて、師弟関係にあるキャラを確立するのは、話を盛りあげる上での大きなファクターです。『キン肉マン』ではキン肉マン&カメハメ、ロビンマスク&ウォーズマン、ラーメンマン&ブロッケンJr(精神面での)といった師弟関係が、ストーリーをよりドラマチックなものにすることに一役買っていました。そしてシリーズも終盤になり、アシュラマンの師匠として登場したのがこのサタンクロス(サムソンティーチャー)です。

 彼の登場は『王位争奪編』が初めてではなく、実は前シリーズの『夢のタッグ編』において、アシュラマンの昔話に登場しています。魔界のプリンスであるアシュラマンの家庭教師となった彼は、川に転落したアシュラマンを救うべく川に飛び込み、その身代わりになってしまいます。しかしその自己犠牲の精神により、「人は憎むもの」という教えを徹底されてきたアシュラマンに優しさや人を愛することを教えた人格者として評価されていました。

 そんな前シリーズの挿話を伏線とし、死んだはすの彼はオーバーボディを身に纏って『王位争奪編』ではアシュラマンの敵として再登場しました。自己犠牲の精神でアシュラマンを助けたことと引き換えに両足を失ってしまった彼は、己の優しさを強烈に後悔します。その弱みにつけこんだ知性の神が寄生虫サタンクロスを彼に授けて両足を再生させると、残虐の精神に目覚めたサムソンは知性の神に借りを返すべく、フェニックスチームに参加したわけです。

 そんなバックグラウンドを持つ彼は、試合毎にその性質を変化させ、その度に己に与えられた役割をこなしています。ザ・ニンジャ戦ではオーバーボディを身に纏い冷徹な攻撃をするサタンクロス、アシュラマン戦では師匠としての優位性を存分に利用し、人格者たる過去を捨て去り非情の鬼と化したサタンクロス、そしてキン肉マン戦では捨てたはずの人格者たる誇りや優しさ(甘さともいえる)が随所に表れるサタンクロスです。

 そして試合を重ねるごとにサタンクロス→サムソンティーチャーへの人格移行がなされていき、その変化は試合結果に大きく影響を与えています。では各試合における彼の役割を分析していきましょう。

 まず初戦のザ・ニンジャ戦ですが、ここで彼はオーバーボディを纏い、サムソンの正体を隠した状態でフェニックスチームの先鋒として登場しました。フードを取り去った彼の姿は、4本の腕に4本の脚、腹にもう一つの顔、蛇の尻尾といった、ギリシア神話の半人馬半馬・ケンタウロスをも彷彿とさせる、かなりキメラ性をもった毒々しいものでした。

 オーバーボディの表情もなにやら病的なニヒルさがあり、地獄からの使者という冷血的なイメージを醸し出していましたね。単に寝不足で目が腫れているようにも見えましたが(笑)。また、腕輪や腰みのといった装身具にアシュラマンとのデザインの共通性が垣間見られ、二人の関係をさりげなく演出しています。

 この試合で彼は「忍術使い」という設定を与えられ、試合は日本忍者のザ・ニンジャと、西洋忍者のサタンクロスとの“東西忍者合戦”というテーマが俄然色濃くなりました。ただザ・ニンジャが己の個性全てが忍術家、つまり頭から足の先まで100%忍者であるのに対し、サタンクロスは「より完璧な超人になるために忍者の特訓も受けたことがある」という程度の、ある種腰かけ忍者という違いはありました。

 しかしその腰かけぶりの設定が、急ごしらえの設定にも感じられ、「ゆで先生の気分でつけられた安易な設定なのでは?」「というか単に“東西忍者合戦”にしたかったんでしょ?」といった疑念をおこさせるのに十分なものがありましたね(笑)。

 彼の得意の忍術は主にうつせみの術、そしてミラクルシーツで環境を変化(霧・海・夜空・砂・沼など)させての攻撃です。蜃気楼を利用しての幻影の術などは、科学的根拠に基づく理論があり(ないけどさ)、西洋忍術らしさを演出していますね。

 また、うつせみの術用の爆薬入り人形を事前に照明灯の裏に用意するなど、細やかな下準備も怠りません。ザ・ニンジャもリング下に水鳥の羽根を仕込むという下準備をしていたため、試合前の会場でお互い準備にいそしむ二人がニアミスしているのではないかと思うと、まったくもってヒヤヒヤしますね(笑)。

 試合はサタンクロスのフェイバリットである『トライアグル・ドリーマー』でニンジャを釣り天井葬。腰かけ忍者に本家忍者を敗北させてしまうあたりに、ゆで先生の描く超人プロレスの非情さを感じずにはいられません。

 寄生虫サタンクロスが本体から分離でき、なおかつ別の人格を持っていたことにもビックリさせられましたね。というか、好きなときに試合展開を2対1にできるというのは反則的なアドバンテージだと思いますよ(笑)。

 また、これによってサムソンと寄生虫サタンクロスは、お互い別人格を持つ個人として共同生活をしていたことが判明します。いうなれば同居生活ですよ。いつも中腰状態の寄生虫サタンクロスは当然腰痛持ちだと思うので、

<span class="fz-12px">寄生虫サタンクロス</span>
寄生虫サタンクロス

サムソン、ちょっと腰を揉んでくれないか?

サムソン
サムソン

わかった。じゃあ分離しようか

<span class="fz-12px">寄生虫サタンクロス</span>
寄生虫サタンクロス

すまんな、いつも

なんて生活の一コマがあったかもしれません(笑)。そんなことはさておき、この試合で彼は忍者合戦という役割を無事こなしたわけです。

 そして二回戦は因縁のアシュラマンとの師弟対決となります。この直前に高飛車なビッグマウス大将のフェニックスが、「全カードひとつの負けなしの15連続KO勝ち宣言」という大風呂敷を広げたために、彼の役割の大半はこの一戦に集約されてしまいました。

 つまり当時かなりの実力者に出世していたアシュラマンを、いかに説得力ある形で勝てないようにしてフェニックスのかっこつけ宣言の辻褄をあわせるかが彼の任務であり、それを遂行するための設定が「アシュラマンの師匠・サムソンティーチャー」というものでした。

 この試合で彼はオーバーボディを脱ぎ捨て、正体がサムソンであることをカミングアウトします。師匠の登場によって実力者・アシュラマンのこれまで積み上げてきた実績はもろくも崩れ、『阿修羅バスター』や『阿修羅稲綱落とし』といった必殺技も手の内を知られているという状態で威力が半減し、サタンクロス>アシュラマンという図式が不自然なく成立してしまいました。

 残虐の精神に目覚めたサムソンは弟子を再び悪の道に誘うなど、精神的な揺さぶりも加えて終始試合を有利に進め、結果、アシュラマンはなんとか痛み分けに持ち込むのがやっとであり、残念ながらフェニックスのビッグマウスを封じることはできなかったのです。

 そして最後はキン肉マンと闘う大抜擢を受けますが、アシュラマン戦にてほとんどの仕事を終えてしまった彼に残された役割は、キン肉マンの新必殺技『マッスル・スパーク』の実験台でした。

 試合はリング下に隠された鎧(ディフェンドスーツ)や武器を、いかに相手より早く装着し有利に試合を運ぶかという“魔方陣リングデスマッチ”でしたが、そのファミコンと聖闘士星矢の聖衣を合体させたようなギミックを持つ試合にはまったく魅力が感じられず、読み進むほどに熱が冷めていった自分がいましたね。

 装着したディフェンドスーツからマジックハンドが出てきて自動的に技を破るという陳腐さや、コントローラーにアシュラマンの冠用のスロットがあるという仰天システム(笑)に、『キン肉マン』という作品の落日をみた記憶があります。

 そんな試合の中で、彼は徐々に昔の人格者・サムソンとしての一面が露出するようになりました。アシュラマン戦でこそ優しさや情を封印した悪のサムソンを徹底しましたが、キン肉マン戦では正義と悪の狭間で葛藤をする展開が多くなったのです。

 勝つために手段を選ばない大将のフェニックス、そしてそれを冷徹に遂行しようとする寄生虫サタンクロスに対し、悪に染まりきれない人格者たるサムソンとのチームワークに綻びが見え始め、そこにつけこんだキン肉マンに完璧マッスル・スパークを極められて敗北してしまいます。

 こうして3種3様の役割を遂行したサタンクロスでしたが、結果からいうと、人格者たるサムソンよりも、優しさや情を封印したサムソンの方が勝率はよく、フェニックス(知性の神)の「愛や情けよりも残虐な精神」理論の方が勝負論的には正しかったというなんとも皮肉な結果を彼はもたらしてしまいました。そう考えると、彼はずっとオーバーボディを装着し続けた方がよかったのかもしれませんね(笑)。

※今回はネスカフェさん、小林さん、キン魚マンさん、サムソンさん、tomotomo93さんほか、たくさんの方からリクエストをいただきました。ありがとうございました。

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