アルヨ

 日本語で外国人らしさを表現する言葉というものがある。こう書くとわかりづらいかもしれないので、例をあげると

「〜デスカ?」(白人系)
「ワタシニポゴワラカナイヨ」(フィリピン系)
「〜アルヨ」(中国人系)

などである。日本語とはおもしろいもので、こんな表現でニュアンスが通じるんだよなあ。確かにカタカナで「ワタシ、ニホンノブンカニ、キョウミアリマス」なんて書かれていれば、アメリカ人なカンジがするし、「シャチョサン、シャチョサン」なんて、舌足らず風に書けば、フィリピン系だ。

 なぜこれらの表現方法が根付いたのか。詳しいルーツはよくわからないが、白人タイプに限っていえば、戦後日本マンガの影響が大きいとおもう。どのように表記すれば、日本語でもニュアンスを伝えられるか、頭をひねって考えたのだろう。マンガはイラストがついているので、それだけでも外国人を描けば、一応わかってはもらえるとおもうが、セリフにも一工夫ほしい。ふと気づくと、テキストも記号の一種であり、視覚的に表現できる。なら、舶来ものをカタカナ表記するように、セリフもカタカナ化しちまえっ、てなカンジだったのだろうか?これがまた、ばっちりフィットしちまったんだろう。

 フィリピン系は、これはもう、彼らの会話そのままであろう。「っ」という、つまった音や、のばす音が苦手なのか、その特徴をよく捉えることで、イメージやニュアンスを表現している。

 さて、わからないのが中国人系である。昔から疑問におもっていたのだが、なぜ「〜アルヨ」と語尾に「アルヨ」をつけるだけで、こんなにも中国人風になるのであろうか?  「〜アルヨ」が、中国人系をイメージさせることに異論を持つ人は皆無だとおもう。それくらい「〜アルヨ」は、ニュアンスを伝えることに関しては完璧であり、その表現方法は認知されている。しかしなぜ「アルヨ」? つーか、「アルヨ」ってどういう意味? 意味わかんないのに、なんでオレは「アルヨ」で、中国人を連想できるの? ルーツはまったくわからないので、予想するしかないのだが、オレ的には2つほど「この影響か?」とにらんでいるものがある。

 まず一つ目は「ゼンジー北京」である。あの「レッドスネーク、カモン!」のコメディアンだ。中国人の格好に扮した彼が、「〜アルヨ」といっていた気がする。ちょっとうろ覚えだが。 二つ目はやはりマンガだ。石ノ森章太郎先生の『サイボーグ009』に、たしか中国人のメンバーがいたとおもう(006だっけ?)。彼も「〜アルヨ」といっていたような…。まったく根拠はないが、赤塚不ニ夫先生のマンガにも、「〜アルヨ」というキャラがいそうな雰囲気だ。

 だが謎なのは、なぜ彼らが中国人を表現するのに、「〜アルヨ」を採用したかである。やはり彼ら以前に、「〜アルヨ」は中国人の表現方法として「認知」されていたわけだ。フィリピン系のように、当時の中国人がしゃべる特徴を真似たものなのか? しかしオレは「〜アルヨ」なんて語尾につける中国人をみたことないぞ?

 まったくもって、謎だらけの「アルヨ」である。どなたか真相を知っている方がいたら、ぜひご一報いただきたい。

(2003年11月24日)

(2006年3月4日追記)
 この「アルヨ」について、読者の大西さんより貴重な情報をいただきましたのでここに追記いたします。大西さん、どうもありがとうございました!

これはかつて日本政府が満州国を傀儡(かいらい)国家にした際、現地の満州人に教えた「協和語」に由来します。これは日本語から「てにをは」の助詞を省略した簡易な日本語で、日本人と満州人の意思疎通に用いられました。例えば「これは○○です」は「コレ○○アル」となります。

日本の敗戦によって使われなくなりますが、その後漫画や漫才などで中国人のセリフとして用いられ、次第に中国人のしゃべ る日本語としてのイメージが定着しました。 

だそうです。勉強になったね!

(2009年10月12日追記)
 ゼンジー北京さんは、コメディアンではなくマジシャンであり、「レッドスネークカモン!」は東京コミックショウの持ちネタだそうです。たかさん、ご指摘ありがとうございました!

 

 

 

 

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