ファッションの御三家

 小学生の頃って、いうほど洋服には頓着しない人が多いと思うんですね。どうせ遊びまわって汚れるから、動きやすくて安ければ何でもいいやと、母親が購入してきたノーブランドの服を着回ししていることが多かったと思います。特に男の子なんかは、夏はTシャツに半ズボン、冬はジャージといったスタイルが定番であり、みんな似たようなコーディネイトをしていた記憶があります。

 そんな中でも、小学生男子の中ではステイタスになるブランドがありました。そう、アディダス、アシックス、プーマのスポーツメーカー御三家です。ジャージやトレーナーや靴下、シューズ等をそれらのブランドで固めるのがカッコいいとされており、小学生男子の自己顕示欲をおおいに満たしてくれたものです。母親からは「そんなマークが1つ付いているだけで高くなるものを、何を好き好んで購入しなければならないのか」と、男のロマンを全否定されたりしましたが、兎にも角にもそのワンポイントが重要だったわけです。

もはやアディダスの広告塔・若林さん。 そんな価値観を定着させた一因に、『キャプテン翼』がもたらしたサッカーブームの影響があると思います。マンガのキャラが実際に存在するメーカーの商品を身に着けるという、ある種マンガ内広告の走りともいえるその表現方法にすっかりと取り込まれてしまったわけですね。特に広告宣伝効果抜群だったのが、日本が誇るS・G・G・K(スーパーグレートゴールキーパー(笑))、若林源三が被っていたアディダスの帽子でしょう。ペナルティ・エリア外からのシュートは100%防ぐというその守護神が被っていた帽子は、小学生にとっては非常に魅力的であり、校内のあちこちにアディダスの帽子を被っている連中が跋扈しておりました。

 かくいうオレも、この帽子には執着した口で、赤地に紺のアディダスマークの若林源三モデルを探しまくったのですが見つからず、仕方なく白地に赤マークの帽子で妥協したという思い出があります。今から思うに、あの若林モデルは市販のラインナップになかったのではないかと思いますね。もし情報があったら教えてください(笑)。

 『キャプテン翼』はスポーツブランドのカッコよさを小学生に啓蒙する傍ら、ウェアの着こなしにも少なからず影響を与えていますね。シャツの両袖をクルクルと肩口までまくる“日向小次郎スタイル”、ジャージの足元をこれまたクルクルと膝下までまくり、ハイソックスを強調する“若嶋津スタイル”などです。特に後者の“若嶋津スタイル”は足が長く見えるという利点と、まくった裾からアシックス等御三家ブランドのワンポイントが覗かれるのがまたオシャレで、スポーツ万能な当時のイケてる軍団がこぞってマネをしていました。ただそのスタイルはいかにも「カッコつけ」の印象があり、他の人から見ると「スカしてるなあ」というイメージをもたれていたのも事実です。だからおおっぴらにそういった格好をする度胸がなかったオレや加藤くん(仮名:男性)なんかは、教卓の裏でひっそりと裾をまくりあげ、「隠れスカシ」を堪能して悦に浸っていたもんです。どうだ、やることが小さいだろう。まいったか(苦笑)。

 

肩口に男を感じさせる“日向スタイル”

 

スカしファッション“若嶋津スタイル”

 そんな御三家ブランドですが、それを身に着けるのはやはり親御さんの購買力にかかっているわけで、そこに貧富の差が如実にでてくるのが悲しいです。資金が潤沢な家の子どもは「帽子―Tシャツ―短パン―ソックス―シューズ」の基本ラインを御三家ブランドでしっかりと固め、さらにはジャージ、パーカー、ウィンドブレーカー、バッグ、手袋等のオプションもすべて御三家ブランドという離れ業をやってのけ、「今日は上から下までアディダスコーディネートだぜ」なんて得意気にしている陰で「成金ファッション」なんていわれたりもしていました(笑)。

 それとは逆に、なんといっても悲惨なのは、母親にパチもんブランドを買ってこられた人ですね。「アディウム」とか「ピューマ」とか(笑)。「これちげーよ!」「似たようなもんでしょ、こんなの!」なんて親子喧嘩が日本中で繰りひろげられていたんだろうなあ。でもこういった風景が記憶に残った方が、なんか楽しい子ども時代のような気もしますけどね(笑)。

(2009年1月1日)

 

 

 

 

次の話にすすむ

波瀾万丈のトップにもどる

小学校トップにもどる

トップにもどる