謎のマンガ家・Mr.X

 オレはガキの頃からマンガを模写するのが好きで、『サーキットの狼』や『ドラえもん』を手本にしては、せっせと絵を描いていたものです。そのうち自分でコマ割りをしてマンガの真似事をすることも多くなってきました。まあ第三者が読んでも、おそらく何が描いてあるかは理解不能なレベルだったと思いますが(笑)。

 そういったマンガに対する下地が育つ中、小学5年のときに『ジャンプ』に出会うわけです。その情熱については以前「オレと少年ジャンプ」に書きましたが、実は読むだけでは飽き足らず、描く方にも情熱を傾けていたんですね。つまり自分たちでもジャンプのような雑誌を作ってみたくなったわけです。ちょうどその頃は戦国時代のザビエルのごとく、周りの友達に『キン肉マン』の啓蒙活動が終了していたときで(笑)、オレの口車にのった友達が10人くらい、この企画に賛同してくれました。各々が5〜10ページの作品を持ち寄り、合本して1冊の雑誌にするのです。

 ちなみにオレが描いたマンガは、100人が読めば100人が『ハイスクール!奇面組』のパクりだと答えるであろうギャグマンガでした(笑)。まあ当時は「キャラは似てるけど、内容はオリジナルだ」と言い張り、盗作扱いされることに対して予防線をはっていましたけどね。そんな風に体面を取り繕わなくたって、『ハイスクール!奇面組』作者の新沢基栄から非難されることなんてありゃしませんて(笑)。まったくもってプライドだけはいっちょまえでした。まあ小学生なんてそんなもんよ(笑)。

 といった感じで、それぞれがオリジナル(笑)のマンガを提供しあい、第1号はなかなか順調な滑り出しでした。雑誌の名前はみんなで意見を出し合い『少年ライフル』に決定。少しでも『少年ジャンプ』に近づけるために、巻頭カラーやパートカラーのマンガをつくったり、表紙裏に手書きで広告を入れたりと、子供ながらにも細かい部分にこだわりました。また、なんだかんだ全体で50ページ近くの冊子になったので、家庭用のホッチキスでは製本できず、職員室に行ってデカホッチキスを借りて製本したりしてね。そして教室後ろのロッカーの上に『少年ライフル』を置き、クラスのみんなが自由に閲覧できるようにしました。

 この『少年ライフル』は、子供のころにありがちな一回きりの企画で終わることなく、なんと15号くらいまで発刊されるという、なかなかの長寿企画となりました。第10号記念号では、すべての連載マンガがオールカラーという(色鉛筆で塗るだけだけど…)夢企画(笑)を実現。それまで『少年ライフル』の動向を否定的にみて、いっさい参加をしていなかった山寺くん(仮名:男性)も、そのうち興味の方が反抗心を上回ったらしく、とうとうこの号で30ページの特別読切マンガを執筆すると宣言。ところが初めてのマンガ作成にくわえて、すべてのページに色をつけるという地獄的な洗礼を浴びてしまいました(笑)。休み時間に「終わんね〜〜」と必死で着色していた山寺くんの姿は、今でも鮮明な記憶として残っています。それこそ手えだすんじゃなかったと後悔していたんでしょうね(笑)。

 『少年ライフル』の知名度は発刊を重ねるごとに上がっていき、クラスの男子はもちろん、隣のクラスの人間が読みにきたり、女子軍団が男子に隠れて読むほどにまでなりました。閲覧実績が増えるとともに、雑誌がへりがボロボロになるので、表紙の断ち落としラインをセロテープで巻いて補強したりしました。そのうち表紙のビニール加工(パウチ加工みたいなやつね)もなんとかしてできないかと、サランラップを巻いてみたりしてね。これはすぐ破れちゃうんで失敗でしたけど(笑)。その他にも、特別付録にシールを綴じこんだりしました。シールっつっても、絵を描いた用紙の裏に、うす〜くスティック糊を塗りこんだだけなんだけど。唾つけて切手のような感覚で貼ってくれ、みたいな。なんかガキなりにいろいろ知恵を絞ってたなあ(笑)。

 さて、そうそうたる豪華連載陣(笑)を抱えた『少年ライフル』でしたが、実はあるサプライズを編集長たるオレは創刊時に仕込んでいました。実は覆面マンガ家“Mr.X”をその連載陣に加えていたのです。メンバーすら知らないこのマンガ家の正体については、さまざまな憶測が飛び交い、一時期クラス内は騒然としました。

「となりのクラスのAが描いているんじゃないか」
「いや、アキラが自分のマンガと平行して2本描いているんだ」

といった感じで、「Mr.Xはいったい誰なんだ」と問い詰められたのですが、オレは決して秘密を漏らすことはなかったので、このマンガ家の正体は『少年ライフル』の廃刊までずっと謎のままでした。こういった製作サイドでの遊びの部分も、マンガを描くという本流とは別の部分で楽しかったですね。なんか大衆の気持ちを操作しているみたいで。まあこの快感が源流となり、現在の『オレ流ホームページ』があるんですけどね。つまりやってることはガキの頃からあんまり変わってないということなのかな(苦笑)?

 ちなみにMr.Xの正体は、オレの兄貴です(笑)。

「お、アキラ、なんかおもしろい企画してんな…なんならオレもひとつ、描いてやろうか?ん?」

と、上から目線で執筆交渉をしてきました。中学生のくせに小学生の企画にしゃしゃりでてくる厚顔さには少々驚かされましたが、そんな兄・タケシもいまやいっぱしのグラフィック・デザイナーとして独立しています。お元気ですか(笑)?

 『少年ライフル』は小学校卒業とともに廃刊になったわけですが、最後はすべて解体し、個人ごとに作品を返却しました。今回このエッセイをかくにあたり、できれば現物を晒して笑いのネタとして提供したかったのですが、どうやら母親にあっさりと捨てられていたようです。残念だなあ。

(2007年12月8日)

 

 

 

 

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