サクレツ隊大勝負!

 突然だが、皆さんの初恋はいつ頃だろうか? しかもその想いを相手に告げる行動にでたのは? つまり告ったのっていつ頃? 今回はそんな恥ずかしい話です(いつも恥ずかしいが・・・)。

 予想通り(笑)デビューに失敗したサクレツ隊の面々(オレ・川俣くん・村木くん)は、新たな行動を模索していた。小学校生活も残り少なくなってきたし、何か思い出に残ることをやりたかったのである。そこでまた川俣くんが、思いついたようにいった。

最後に好きな娘に告白しねえ?

 とんでもない提案だった。なんでも3月14日のホワイトデーに、キャンディーかなんかを贈って告白しちまおうという、バレンタインデーにチョコをもらったわけでもないのに、なんとも相手にとっては迷惑この上ない企画だった。

 たしかに「第一次おマセブーム」の真っ最中であったオレらには、それぞれ意中の女子がいた。村木くんは美少女タイプの青山さん(仮名)、川俣くんはボーイッシュタイプの三島さん(仮名)、オレは全クラスの男子の中でも抜群の人気を誇っていた、隣のクラスの江川さん(仮名)という双子の妹のほうをロックオンしていたのだ。

(余談だが、江川さんは双子ということもあり、姉妹そろって当然瓜二つであったのだが、なぜにオレが妹のほうを選んだのかというと、単に「どちらにしようかな〜、天の神様のいうとおり〜」で妹のほうに当たったからであり、この事実は決して洩れてはならないトップシークレットである(笑)。逆らえないよなあ、天の神様が選んだんだから! ・・・小学生なんてこんなもんだよ。)

「ムリだろ!」

 はじめはそう思ったのだが、徐々に好奇心のほうが強くなってきた。小6で告白か・・・そうそう実行できるやつはいまい。つまりこれができたらオレは同級生の連中よりも、頭一つ飛びでた大人ってことだ。こりゃ英雄だよ! 子ども心に早熟な行動だとわかっていただけに、余計それを敢行したときの自分を思うと、なんとも誇らしい気がしてきたのだ。その精神的興奮は事を起こすのに十分な要因となったのである。

 サクレツ隊は動いた。東武ストアでホワイトデー用のキャンディーを購入し、便箋に手紙をしたためた。サクレツ隊の狙いは、意中の女子を呼び出しての直渡しである。電話やら、ポストに投げ込むやらといった、コスイ告白はしないのである。正面切って告白するからこそ英雄になれるのだ。ちなみにオレが書いた手紙というのは・・・

江川へ

今日の放課後、体育館の裏に来てくれ。

渡したいものがあるんだ。

江川を想う男より

ちょっとよく覚えていないが、こんな感じのものだったと思う。しかし・・・なんともエラそうだね。命令口調かよ。そして必要最低限の単語しかないシンプルさ・・・小学生なんてこんなもんだよ(汗)。当日のインパクトを増すために、あえて名前を伏せておいたところに多少の計算が見受けられる。

 しかもさらに恐ろしいのは、告白後のことをなーんにも考えていなかったことであろう。万が一相手がOKしてくれたとしても、それは単に嬉しいと思うだけで付き合うとか全然考えてなかったし、どうすりゃいいかわからなくて逆に困ってしまうかもしれない。とにかくこの時点では、告白をするという自分の行為に酔っていた感があり、今から思うと相手に対してものすごく失礼だったわけで(笑)。頭のなかでは当時『ジャンプ』に連載されていた『キックオフ』画像がなかなか見つからなかった・・・というラブコメマンガ(古!)を手本に、都合のいいセリフなんかも用意されたりしていた。・・・小学生なんて・・・(略)。

 だが決行2日前になるとサクレツ隊に亀裂が入った。まず村木くんがプレッシャーに耐えられず

「オレやっぱやめとくわ」

と脱落。そして言いだしっぺの川俣くんも

「朝こっそりポストに入れておく」

と、コスイ告白に走ったのである。二人に突然のヘタレ宣言をされたオレは、やめときゃいいのに余計に意地をはって、

「オレは計画通り実行するぞ」

とその方針を曲げず、決行前日の放課後、例の手紙を江川さんの机の中に投げ込んだのである! 3年後に男子校に入学し、まさか女の子と会話ができなくなる男とは思えないほどの勇敢な行動ではないか(笑)!

 とうとうやってしまった。生まれてこのかた、こんなに興奮したのは初めてである。当日も朝から心臓は高鳴り、授業も何をやっているのかわからない。だんだん自分がしでかしたことの重大さに押しつぶされそうになり、逃げ出したくなってきたが、あっという間に放課後はやってきた。今ならまだ単なるイタズラで終わらせることもできる。しかしオレは自ら指定した体育館の裏に向かった。頭一つ飛び出た大人になるのだ。

 震える足を一歩一歩前に出し、勇気を振り絞って現場に向かう。後ろには後見人として、サクレツ隊の面々。ば、バカ、オレがビビってどうするんだ。名前もわからん男子に呼び出されて独り待っている彼女のほうが、よっぽど不安なはずじゃないか。そうだ、ここはオレがビシッと決めにゃいかん、と意を決して体育館の裏に到着したオレがみたその光景とは・・・!

なんじゃこりゃああああ!

 学校開設以来、体育館裏にこんなに人が集まったのは初めてなんじゃなかろうかというほどの人、人、人。てっきり江川さん一人肩を震わせて待っていると思い込んでいたオレは、その予想外のギャラリーの多さに驚愕した。おそらく江川さんの机に入っていた手紙はあっさり他の男子にも見つかり、瞬く間に隣のクラス中に知れ渡ってしまったのであろう。日常滅多にないこのイベントを一目見物しようと思った輩が大挙して集まり、こんな事態になってしまったに違いない。

 サクレツ隊3人に対し、20人はいただろうか? 動転していてよく覚えていないが、不安げにこちらを見つめる江川さんその人は、ハッキリと確認できた。オレは好奇の視線に囲まれたスペースに入り込み、その中央にいた江川さんに無言でキャンディーの入った包を手渡した。『キックオフ』をベースに考えていたセリフなんて、一言もいえなかった。オレは包を手渡すやいなや、一目散に駆け出したのである。そりゃもう、サッカーフランスワールドカップ出場を決めたときの岡田監督よりも速かったさ。オレは走って走って走りまくった。とにかく恥ずかしくて、その場から逃げ出したかったのである。気づいたら家の手前まできていた。川俣くんと村木くんが数分後に遅れて追いついてきたのを覚えている。

 翌日登校するのはさすがにキツかった・・・ウワサがどこまで広がっているかわからないからだ。ただうちのクラスを覗くギャラリーが異様に増えていたことは、ハッキリとみてとれた。全部無視したけど。

 当の江川さんからは、後日ちょっとしたお菓子と手紙が届きました。内容はよく覚えていないけど、「好き」とも「嫌い」とも書いてはいなく、「アキラくんはアキラくんのままでいてください」という、よく意味のわからないものであった。たぶん書いた江川さん本人もわかっていないと思う(笑)。お菓子はキャンディーのお返しというニュアンスだったようだ。

 時は過ぎ大人になり、江川さんは結婚して一児の母になっています。たまに同窓会とかで会うけど、未だにお互い照れちゃってね(オイオイ)。当時のことについて深く話したことがないんだよね〜。このまま思い出として眠らせたほうがいいのかなあ。

(2004年5月5日)

 

 

 

 

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