お酒で事件を起こす人

 会社の先輩の矢部さん(仮名:男性)は、お酒が大好きである。最近でこそその酒量は減ったが、一昔前はかなりのものであった。

 しかも矢部さんはお酒にまつわる事件が多く、その破天荒な行動にはかなり笑わせてもらっている。今日はその事件のいくつかを紹介したい。

@ジキルとハイド事件
 オレが大学を卒業し、新入社員としてはじめて仕事を教えてもらったのが矢部さんだった。新社会人として期待と不安に胸をふくらませていた当時、なれた手つき、会話で仕事をする彼は、そりゃあもう尊敬の対象であったわけで。

 そして新人の歓迎花見でのこと。桜の木の下に陣取って、営業部の飲み会が始まった。新人の自己紹介やら、恋人はいるのかいないのか、みたいな話題を肴に、宴は進んでいった。

 すると矢部さんの顔が赤くなるにしたがって行動に変化があれわれた。目がすわり、その言動もどんどんおかしくなってきたのである。

「バカ!だからオメーはバカなんだよ!バカバカ!」
「テメー、この〜チクショウ!!」
「オレンジジュースはここで飲んじゃいけねーんだよ!俺んちジュースだから!」
「白菜を食うときは気をつけろよ!歯がくさくなるからな!」
「ヨッシャアア!ヨッシャアア!」

 普段の仕事態度と比べてこの変わりよう・・・その姿はテンションが高くなった勝俣州和の

「シャアアア!」

を彷彿とさせるものであり、酒でここまで人が変わるのを初めて目撃した瞬間だった。軽いカルチャーショックを覚えたオレはすっかり矢部さんのペースにハマり、終電を逃して人生初のサウナ泊まりを経験するに至ったのでした(笑)。

A人身事故危機一髪事件
 いつのようにしこたま飲んだ矢部さんは、足取りもフラフラとしつつ、終電のホームに立ったそうです。そしてよろめいた拍子に線路に落下!そこに終電の列車がホームに突入!

「ああ〜っ!!死んだーっ!!」

誰もがそう思ったそうです。青ざめた駅員が駆けつけると、無傷の矢部さんがひょっこりと顔をだしました。この危機一髪の状況で、彼はうまく線路のレールの間にはまっていたらしく(図1)、列車の底面と地面との隙間の上を列車が通過したために(図2)、無傷だったとのこと。なんとまあ幸運なことか。もしも手やら足やらがレールの上に投げ出されていたら、確実に切断されていたでしょう。

     
図1                  図2

 このせいで電車のダイヤは遅れたが、終電だったためにたいした影響がなく、鉄道会社からも損害を請求されずに済んだらしい。この面でも幸運だったといえるでしょう。これを境に彼はこういう発言をするようになりました。

「オレは一度死んだ人間だからさ」

いや、開き直りすぎだって。

Bウンコ事件
 年をとるにつれ、飲酒後の矢部さんは帰りの電車で寝ると、自分の降りる駅を寝過ごしてしまうことが多くなった。そのたびに最果ての終着駅で途方に暮れ、大枚はたいてタクシーで自宅まで帰るのである。

 その日もほろ酔いの矢部さんは終電に乗り込み、速攻で熟睡。案の定寝過ごしてしまった。降りた駅はそうとうな田舎駅で、カプセルホテルはおろか、タクシーすらない。ただ幸いなことに、その日は週末で、翌日は休みであった。ムリをすることをやめた矢部さんは野宿を決意し、手ごろなスペースを探した。そこで発見したのが障害者用の個室トイレであった。人が横になるスペースがあり、鍵をかければ防犯上もセーフティ。本来このようなつかい方はいけないとわかっていながらも背に腹は変えられず、この魅力溢れるスペースで矢部さんは一夜を明かすことになった。ただ地べたにダイレクトに寝そべるのにはやはり抵抗があったらしく、ちょうどトイレに転がっていたスポーツ新聞を発見。それを地面に敷いて、横たわり、深い眠りに陥ったのである。

 翌朝、目覚めた矢部さんは始発の電車に乗り込み、家路へつく。ここで矢部さんは異臭に気づいた。

なんかウンコくさいな・・・

 周りの人も同じことに気づいたみたいだ。顔をしかめている人が複数いる。誰だよ、こんな朝からウンコの臭いを発してるやつは・・・と、臭いの原点を探るがわからない。怪しいのは近くで大口を開けて豪快に眠っている、小汚いオヤシだ。いや、それしか考えられない。まったくしょうがねーなーと思いつつも電車を降り、自宅に到着。呼び鈴を鳴らすと、怒り狂った奥さんがドアを開けた。

奥さん「アンタ!!また飲んで乗り過ごしたんでしょ!!もういい加減にしてよね!・・・ってクサッ!!アンタなんかウンコ臭いよ!!
矢部「そうなんだよ、電車に乗ってるときにウンコ臭いオヤジがいてさ、臭いがうつっちまったのかな?」
奥さん「いや、アンタが臭いのよ。あれ!?そのスーツの後ろ。何か茶色いのがついてる!」
矢部「え?どこどこ?・・・あっ!!なんだコレ?うっわくっせー!!

 そうです。皆さんの予想通り、ウンコの臭いの元は矢部さんだったのです。地面に敷いたスポーツ新聞。あれにウンコがついていたらしいのです。おそらく紙がなくて、スポーツ新聞で代用した人がいたのでしょう。それがそのままポイされて、何も知らない矢部さんがふとんがわりに敷いたわけです。

矢部「・・・そういえば電車に乗っていた人はみんな、オレを見ていたような・・・」
奥さん「ような、じゃないわよ!みんなアンタがスーツにウンコくっつけてたのを知ってたのよ!もう〜、ホント、アンタにはほとほと呆れたわよ。そのスーツも自分でクリーニングに出してよ!恥ずかしいから!!」

 その日、風呂場で矢部さんはスーツに付着したウンコをせっせと洗い流したそうです。無実の罪をきせてしまった、電車のオヤジに心で詫びながら。

 以上、最近は5歳の息子にまで

「おいおい、まだ飲むのかよ〜〜!?」

と、ツッコミを入れられている程の酒好き、矢部さんの話でした。

(2005年3月20日)

 

 

 

 

次の話にすすむ

波瀾万丈のトップにもどる

おもろい人々トップにもどる

トップにもどる