外見と中身にギャップがある人

 世の中外見で人を判断するということはあまりよくないことだとはわかっているのだが、やはりその人の顔立ち、風貌で「こんな人かな」と予測してしまうのは否めない。それだけに、実際その人に接してみて、自分の予測と全然違っていて内心ビックリしてしまうということも少なくない。オレが入社して4年目のときに中途採用で入社してきた野呂田さん(仮名:男性)も、まさにそれにあてはまった人であった。

 正直、野呂田さんをはじめてみたときは「なーんかヌボーっとした人だな」というのが第一印象だった。背がヒョロ高く、ヤセ型で、動きはどちらかというとスローモー。こりゃかなりのノンビリ屋さんだと直感したのだが、彼はなかなかに喰えない人であった。それは結果的に2週間で会社を去ってしまうという、超特急記録をうちたてることになる。彼にまつわる事件をいくつか紹介しよう。

@入社翌日より連続遅刻事件

 野呂田さんは入社初日こそ、うちの会社の定時である9時出社をしてきたが、翌日から早くも彼は10時過ぎの出社を繰り返した。一応同業経験者で中途採用であった彼は、前の会社からの得意先を2、3もって来ていたらしく、そこへの「直行営業」という名目で遅刻をしていたことになっていた。しかしである。オレと一緒に営業車で営業にでたときのこと。

野呂田「アキラくん(彼のほうがオレより年上だった)、ここ会社の人はみんな真面目だねえ。ちゃんと時間を守って出社するもんなあ」
オレ「・・・え?それって普通じゃないですか?」
野呂田「そう?前の会社なんてみんな直行営業とかウソいって、家で昼まで寝てたもんだけどなあ」
オレ「(ちょっとあ然となって)・・・でもこの会社は一応9時出社なんで・・・間に合うように来たほうがいいですよ・・・」
野呂田「なかなかそうも体が動かなくてね・・・まあ徐々に慣らしていくよ・・・」(オレ流調整!?
オレ「・・・はあ」

 いい忘れていたが、彼がうちの会社に中途入社したのは、前の会社が倒産したからだそうです。倒産した理由がわかったような気がしました

A入力断念事件

 製造業の会社というものは、普通営業はお得意先から受注した物件を、コンピュータに受注伝票として入力しなければならない。そうやってコンピュータで一元管理しないと、会社全体の仕事の進捗(進行具合のこと)がわからないのだ。

 つまりオレが野呂田さんにはじめに教えなければならないのは、当然コンピュータへの受注物件の入力法ということになる。そこで事件は起こった。

オレ「・・・で、ここにカーソルをもってきて、件名を入力してください」
カチャカチャ・・・・(恐ろしくゆっくりしたキーボード操作が続く)
オレ「あ、そうじゃなくて、この場合はこのキーを押します。でリターンを押して・・・」
カチャカチャ・・・・(恐ろしくゆっくりしたキーボード操作が続く)
オレ「・・・で次の項目に予定納期と時間を入れて・・・」
カチャカチャ・・・・(恐ろしくゆっくりしたキーボード操作が続く)
オレ「・・・あ、そうじゃなくて、こうです。半角キーを押して英数で・・・」
野呂田「・・・なんかすごく面倒なんだね。いや〜、もう疲れたよ。続きは明日にしようよ」
オレ「いや、これを入力しないと仕事が流せないんですけど」

 結局その伝票はオレが入力しました。

B営業本部長挑発事件

 野呂田さんと昼飯を会社で食っていたときのこと。何を思ったのか、野呂田さんはこんなことを口走った。

野呂田「アキラくん、ここの営業部長って実際どう?
オレ「どう?って?」
野呂田「つまりこの業界のことについて詳しいのかってことだよ」
オレ「(突然何をいいだすのかと驚きながら)・・・まあ、この道30年の人ですからねえ。そりゃ知識はあると思いますよ」
野呂田「そうかなあ・・・。どうもオレが見る限り、たいしたことないと思うんだけど・・・」
オレ「・・・はあ」(答えようがない)
野呂田「・・・よし、部長がどのくらいの知識があるか試してやる

と、野呂田さんはおもむろに席を立つと、部長の席に一直線に進んでいった。オレはあまりのことに止めることができなかった。

野呂田「ちょっと質問があります・・・」
部長「ん?何かね?」
野呂田「・・・・・・・・・・・・・・・」
部長「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
野呂田「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
部長「・・・・・・・・・・・・・?・・・・・・・・!!」
野呂田「・・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・」
部長「・・・・・・・・・・!・・・・・・・・・・・!?・・・・・・・・・・・・!!!!!」

 話の内容は聞こえなかったが、みるみるうちに部長の顔が不機嫌になったのはいうまでもない。いい忘れたが、これは野呂田さんが入社して1週間たったときの話である。

C昔はよく・・・事件

 すでに最初の印象からかなり逸脱した動きをみせる野呂田さんであったが、これまた外見からは想像もできない会話があった。

野呂田「アキラくんはディスコとかは行くの?」
オレ「(握っていたハンドルを急回転させそうになりながら)ディ、ディスコですか?いや〜、オレは別に・・・」
野呂田「そう。真面目なんだね。ボクは昔けっこう通ってね・・・」

 失礼ながら、その風貌から『ディスコ』という単語がでるとは夢にも思わなかったため、あやうく事故を起こしそうになってしまいました。

D探偵事件

 すでに野呂田さんの風評は営業部中に知れわたり、うちの営業部内ではある種浮いた存在になりつつあった。そんな野呂田さんの、外見との最大のギャップ話を紹介しよう。

野呂田「アキラくんは恋人とかいるの?」
オレ「まあ、一応は」
野呂田「そう。ボクもちょっと前まではある女性と同棲してたんだけど・・・」

このときオレはまたもや事故を起こしそうになったが、なんとか回避した。

オレ「・・・そ、そうなんですか。で・・・?」
野呂田「うん。でもこの間逃げられた
オレ「・・・はあ。そりゃ残念で・・・」(空気が重いよ!助けてドラえも〜ん!!
野呂田「しかも貯金通帳とハンコまでもってかれてね。いや〜参ったよ」
オレ「それって泥棒じゃないですか!
野呂田「うん。だから探偵を雇って捜索したんだよ」
オレ「はあ。それで結果は?」
野呂田「うん。探偵を雇う金が続かなくなったからやめた

 正直、探偵を雇った人には生まれて初めてお会いしました

 以上、様々なギャップを披露してくれた野呂田さんであったが、結局入社2週間で会社を去った。というか、辞めさせられた。遅刻の常習者であったし、やはりなんといっても「部長挑発事件」が大きな原因だと思われる。オレが知る限りうちの会社の最短在籍記録保持者であり、その強烈な個性を打ち破る人には未だに遭遇していない。

(2004年3月20日)

 

 

 

 

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