呪われたCM

 そのCMは呪われていた。

 あるティッシュメーカーのCM。バックに英詩のアカペラの曲が流れる中、血のように赤い背景を背に松坂慶子が座り、その前で赤鬼に扮した子供がティッシュを次々と引き抜いていく。

 実はこのCMがオンエアされた時にはすでに赤鬼役の子供はこの世にいなかった。CM撮影終了後、3日3晩の金縛りにうなされながら謎の死を遂げてしまったらしいのだ。CM関係者の不幸はこの後も続き、カメラマンがサウナで機械の故障により焼死するなど謎としか言いようのない事故にあい次々と命を失っていった。また、松坂慶子も撮影直後から極度のノイローゼに陥り、とある病院に緊急入院してしまったという。

 この恐ろしい惨劇のすべての原因は、CMにBGMとして使われたアカペラの曲にあった。この曲は「悪魔の歌」とも呼ばれる黒ミサに使われる曲で、その歌詞を和訳すると「死ね、死ね、一人ずつ呪い殺してやる」というような内容だったのだ。その呪いが関係者を恐怖に陥れたのである。

「マジで?」

 ある日その情報は、瞬く間にクラス中に蔓延した。まだまだ精神的に子供だったオレにとってその手の話は恐怖の対象であり、動揺を誘うに充分すぎる内容であったのだ。

「オレそのCMまだ観たことないけど・・・どこのメーカー?」

 そう。オレはアレルギー性鼻炎の気があったため、自分専用の箱ティッシュを学校に常備していたのだ。場合によっちゃ、そのメーカーのティッシュを使用しているがために、呪いのとばっちりを受けるのではないかと心配したのだ(考えすぎです)。

「なんだったかな?ネ○アだったかな?」

 友人はイマイチ自信がなさそうにそういった。ふう、よかった。オレが使っているのはク○ネックスだ。

「違うよ。クリ○ックスだよ」

 横から口をだしたもう一人の情報にオレは狼狽した。ヤバい!このままだとオレまで呪われちまう!

「マジかよ!うわ、もういらねー、このティッシュ!お前にやるよ!」
「いらねーよ、いらねーよ!」
「オレだっていらねーって!!」

 たしかにその時、箱ティッシュは戦隊ヒーロー物の最終兵器であるミラクルボールのごとく空中を何回か舞った気がする。醜い呪いのなすりつけあいをされた挙句、半分以上まだ残っていたその箱ティッシュは、哀れゴミ箱行きとなったのである。また、この「呪いの歌」を全部歌ったら死ぬとか、聴いたら死ぬとか、はてはCMを観たら死ぬとか、『リング』の呪いのビデオを彷彿とさせるほどに噂は益々エスカレートし、ビビったその日はテレビを観なかったくらいであった(笑)。

 これを読んでなんてチキンな奴だと思った方もいるだろうが、どうもガキの頃はこの手の話が得意じゃなくてねえ。物心ついた頃から家にあった『日本のこわい話』に恐怖し、なけなしの小遣い五百円で買った『世界のおばけ』のイラストに毎夜うなされ(だったら買うなよ)、『あなたの知らない世界』を観ればいとも簡単に知らない世界に誘われ、心霊写真を見れば壁の木目が人の顔に見えるので、夜寝るときは電気をつけたまま『ハイスクール奇面組』を読んで気分を紛らわし、しらぬまに眠りにつくという高等テクニックを身につけるくらい苦手であったのだ。

 また、「口裂け女」の噂が一世を風靡したときはその情報を初めて聞いたその日に

「実は今夜、口裂け女がこの近所にくるらしい」

という仰天ニュースも一緒に仕入れてしまい(もちろんデマ)、「知ったその日に来るいわれても、対策もなにも・・・(汗)」と、そのあまりの準備期間のなさに愕然とした苦い記憶がある。

 結局その「呪われたCM」は一度も目にする機会がなかったため、なんとか呪われず無事にこの歳まで生きながらえてきたわけで(笑)。ただこのエッセイを書くにあたって、やはり一度は観てみたいという好奇心にかられ、ネット上で探してみたのね。すると、動画は残念ながら見つからなかったんだけど、画像を発見したので興味がある方は見てくださいな。・・・たしかに不気味ではあるよねえ。これのBGMに悪魔の歌が流れてるんだから、たしかに夜中とかに観たらちょっと嫌だよね。どうやらクリネッ○スのこの手の芸術性をメインにおいた(?)CMは昔から有名らしく、特にこの赤鬼バージョンが不気味でこんな噂が立ち、都市伝説と化したらしいんだよね。

 ちなみにその後の松坂慶子が大根持ってCMに出ちゃったことこそ、このCMの本当の呪いだっていう人がいるんだけど、ホント、お後がよろしいようでって感じのオチで笑ってしまいました。

(2005年12月4日)

 

 

 

 

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