卒業プロレス

 オレが中3のときの、休み時間の遊びといえば「プロレスごっこ」でした。いや、ごっこなんて生易しいものじゃなかったかな。ある種ガチンコでやってました(笑)。

 10分の休憩が始まれば「カーン」とゴングが鳴り、10分1本勝負の、昼休みが始まればまた「カーン」とゴングが鳴り、20分1本勝負の始まりでした。

 当時はアントニオ猪木率いる「新日本プロレス」と、前田日明率いる「UWF」という団体が熱い火花を散らして闘争している真っ最中でした。この戦いはプロレスのイデオロギー闘争(by古館伊知郎)といわれ、プロレスファンをも真っ二つにして巻き込んだ抗争を繰り広げていたのです。

 ・・・詳しい話を書くとキリがないのでこの辺でやめときますが、ようは単純なオレ達はすっかりその抗争に影響され、身をもってその抗争を実践していたわけです。

 オレ達の軍団抗争は、「FGS(フォリナーズ)」VS「UWF(そのまんま?)」という図式でした。軍団といいつつも、双方二人しかメンバーはいません。普通にタッグマッチが軍団抗争になっていました(笑)。

軍団名

FGS(フォリナーズ)

リングネーム

オレ(アキラ)
ドン・アキラ・ニールセン

岡田くん(仮名)
モアイ・キッド

イメージレスラー

久保田利伸ではありません

I’m british bulldog!

ドン・ナカヤ・ニールセン

ダイナマイト・キッド

VS

軍団名

UWF(ユーダブリューエフ)

リングネーム

磯田くん(仮名)
JOJO高田スタローン

村木くん(仮名)
闘うローマ式戦車前田

イメージレスラー

おまえ男だよ

誰が一番強いか決めたらいいんや!

高田延彦

前田日明

 オレはあの前田日明と異種格闘技の名勝負を残したニールセンに影響をうけ、岡田くんは顔がモアイチックというだけで「モアイ・キッド」に。磯田くんは『ジョジョの奇妙な冒険』からJOJO、そして高田延彦、シルベスタースタローンを合体させた、とっても欲張りなアホまるだしのリングネーム。村木くんは敬愛する前田そのまま。つーか、「闘うローマ式戦車」ってのは前田の異名だろうが。それをリングネームにくっつけているところに、村木くんの浅はかさが見え隠れします。

 オレ達のバトルは休み時間だけでは収まらず、掃除の時間にまでエスカレートしていきました。正直まともに掃除をこなした記憶がありません。当然のように、毎日担任の本間先生(仮名:男性)に怒られていました。しかし何度注意をされてもオレらの熱きプロレス熱は冷めやらず、その激しいバトルは展開されたのです。

 今から思えば、女子のみなさんには悪いことをしたなあと、反省してます。いや、ほんっとに掃除しなかったし。

「ちゃんと掃除してよー」

と、何度もマジメっこの女子に注意されていたのだが、

「なんだかんだいったって、男のこーいう無邪気な子どもっぽいところは、女子は憎めないもんだ」

という、勝手な理論で自分を納得させ、いうこと聞かない聞かない(笑)。この間中学のときの同窓会があったので、

「ぶっちゃけオレらのプロレスどうだったのよ?」

と女子に聞くと

「いや、本気でうざかったけど」

と、歯切れのよい返答がスコーンときたときにゃ、さすがにヘコんだね。

 高校受験も無事乗り切り、オレ達の軍団抗争も終止符を迎えようとしていました。ここは何か思い出にデカいことをやりたい。そこで企画されたのが

卒業プロレス

だったのです。卒業式の当日、朝早く学校に来て最終戦を行い、両軍の抗争に決着をつけようという企画でした。場所は体育倉庫。ここにはプロレスファン垂涎のリング、そう、「走り高跳び用マット」が収納されているのです!

プロレスファン理想のリング

 普段のバトルは固い床の上で行われていたため、どうしても投げ技や落とし技が披露できません。やったら大怪我してしまいます。でも高飛び用マットなら、衝撃吸収力は抜群です。これなら普段は封印していた原爆固めやパイルドライバーが使用できます。
※高飛びマットでも本来は危険です。マネしないように!

原爆固め。マネしちゃダメ!!          パイルドライバー。だからマネしちゃダメだってば!!

 また、ラジカセを持参してテーマ曲を流しながら入場したり、覆面をかぶったり、上半身裸になったりして、臨場感たっぷりなバトルを一度してみたかったのです。

 オレらは早速行動に移しました。卒業式当日、集合は朝の6:00。先生達が学校に来る前に秘密で事を行い、何食わぬ顔で卒業式に合流しようと思ったのです。

 体育倉庫の裏の窓が簡単に開けられることは、すでにリサーチ済みでした。オレ達は窓を乗り越えて倉庫内に進入し、用意したラジカセをつかって、念願の「テーマ曲つき入場」を果たしたのです。その気持ちよさといったら!

 最終戦は激戦になりました。うなるパンチ。しなるキック。高飛びマットの恩恵をうけ、様々な投げ技(スープレックス)も繰り出されました。地味な関節技ももちろん健在です。オレらは嬉々としてその最期のバトルを堪能していました。そしてその興奮がマックスに達っしたその時。

 視線を感じました。誰かが外から見ている!あれほど激しかったオレ達のバトルがピタッと止まり、その視線が倉庫の窓に一斉に注がれました。

 そこには確かにオレ達のバトルをのぞいていた人物がいたのです。ちょうど朝焼けの逆光になってしまったため、誰だか判然としません。なんとなく同じクラスの学級委員であった大場くん(仮名:男性)と判断した磯田くんが叫びました。

磯田くん「大場!何のぞいてんだよ!」(興奮しているため、語調が強い)
謎の人物「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
磯田くん「おい、大場?もう時間か?」(まだ意気揚々)
謎の人物「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
磯田くん「(・・・あれ?)おい、誰だお前。大場か?」(ちょっと雰囲気が怪しくなってきた)
謎の人物「何のぞいてんだよじゃないだろ!お前らこそ何しとんじゃ!!こんな朝っぱらから!!
磯田くん「げ!!

なんと怒声が返ってくるじゃありませんか!・・・ええ、みなさんの予想通りですよ。のぞいていたのは担任の本間先生その人でした(汗)。

 おそらく自分らのバトルに陶酔していたのでしょう、思ったよりもその奇声やら衝撃音が外に漏れていたらしいのです。そして卒業式の準備のために、早めに登校していた担任の耳に入ったというわけです。しかも磯田くんは担任に対しての暴言・・・。自爆です。

「ホントーにお前らは最後の最後まで懲りないやつらだな!」

 オレ達の最終戦は、レフェリーストップならぬティーチャーストップで、強制的に終了させられました。最後のホームルームでみせた本間先生の涙が、果たして別れの悲しさから生じたものだけだったのか、今でも疑問に思っています。悪いことしたなあ。

(2004年6月17日)

 

 

 

 

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