ペナン島旅行記(その3)

〈SCENE9〉ブレックファーストPart2

 ペナンに新しい朝が来た。男はまばゆい光の中で目を覚ました。今日は何をしようかと考えながら、トイレで用便を済ます。大理石の床の上で済ますのも、なかなかオツなものだ。ただウォシュレットを装備していないので、いささか尻を拭きすぎたようだ。朝からヒリヒリする尻をかかえたまま、男は優雅に朝食でもとることにした。

 今朝もマレー系の給仕のゴンザレスくん(仮名)がメニューを持ってきた。今日こそはとワッフルを注文する。するとゴンザレスくんは少々困った表情を見せながら、厨房へ確認に行った。

「Sorry, it’s finished.」(すいません、終わってしまいました)

 ゴンザレスくんは苦笑いをしながらこう答えた。またもや来るのが遅かったのか。というより、異様なワッフル人気に

「・・・ホントははじめから用意していないんじゃないのか?」

と、ホテル側が聞いたら「ギクッ」とすることをいいたかったのだが、それを英語で言う実力が男には備わっていなかったかどうかは定かではない。

〈SCENE10〉ホテル探訪

コロニアルな外観の『イースタン&オリエンタル・ホテル』 男が宿泊する『イースタン&オリエンタル・ホテル』は、ここペナン島でも有数の高級ホテルらしい。シーフロントに約850フィートも続く純白の建物はイギリス統治下のコロニアルな風貌を残し、ヨーロッパの宮殿を思わせるほど圧巻である。

 男は午前中をホテル探訪に費やすことにした。なるほど、ホテル内の廊下、階段、壁、家具と、すべてが宮殿チックな重厚感があり、外装の白い壁は南国の青い空によく映えている。シーフロントの庭に出れば、赤や黄色や白のきれいな花が咲き乱れており、椰子の木の緑と見事なコントラストをなしていて、リゾート気分をいやがおうにも盛り上げてくれる。さらに様々な鳥の鳴き声が、オーケストラを奏でていた。男はシーフロントに東西に伸びた建物を見ながら

「さすが850フィートというだけはある。豪壮なもんだ」

と感嘆の声をあげたが、ちなみに850フィートって何メートルだ?という疑問については考えないようにしていたかどうかは定かではない。

大理石の豪華なロビー。    白い壁面と木々がいいカンジ。

宮殿を思わせる階段を見上げる。 朝もやの中庭。赤い花がアクセンツ。 このような花が、そこかしこに咲いていました。

〈SCENE11〉スパ体験

黄金に輝くホテル『ザ・ノーザム』 男は金色に輝く高層ビルの前に立っていた。これから男は未体験ゾーンに乗り込もうとしていたのだ。男の頭の中ではリゾートパンフにありがちな、うつぶせに寝そべった女性が恍惚の表情でマッサージを受けている写真が浮かんでいた。そう、男は生まれて初めてのスパ体験に挑もうとしていたのである。

 スパのサービスを行っているのは、『イースタン&オリエンタル・ホテル』からタクシーで10分くらいの『ザ・ノーザム』。男の目の前にそびえ立っている金色のビルだ。エレベーターで9階まで上がり、受付をすませる。ちなみにこの階にはプライベートプールもあった。しかも誰も泳いでいない。入場をチェックするところもなく、正直誰でも泳いでいいような状態だ。こりゃ太っ腹だなあと思いつつも、今日は泳ぎに来たわけではないので、男はぐっとこらえた。

『ザ・ノーザム』のプライベートプール。高層階にあり、眺めは抜群。誰でも侵入でしるし、タダで泳げそう。   ありがちなスパでのマッサージイメージ。

 スパの部屋に入ると、そこはプライベートルームのようだった。薄暗い照明の中、ベッドが2基横たわっている。奥には専用のジャグジー、スチームサウナ、普通のサウナが設備されており、はじめの40分はここで自由にくつろいでいいらしい。すると係員が花びらをジャグジーにばら撒いた。それによりジャグジーバスは、より一層の南国テイストを生み出した。さっそくジャグジーに浸かろうと、男は衣服を脱ぎ始める。だが男は疑問だった。素っ裸で入るものなのか、それとも箱根小湧園『ユネッサン』のように、水着を着用すべきなのかがわからなかったのだ。少々考えた末、とりあえず水着を着用することにした。このとき男が

「後でマッサージ師が来たときに、ちんちん丸出しで出迎えるのもなあ

と思ったかどうかは定かではない。

スパルーム。テレビもある。湿気ですぐに故障しそうだが…。その他、チョコとシャンパンがついてきました。   室内に据えつけられたジャグジー。この中に花びらをばら撒く。

 そして男はジャグジーにゆっくりと腰を下ろした。色とりどりの花びらが男の周りをダンスする。しかしジャグジーの水流の影響なのか、花びらはどんどん排水溝に流されてしまい、そのダンスは一瞬にして閉幕してしまった。あまり意味がなかったなと思いながらも一通り男が施設を堪能すると、ドアをノックする音が聞こえた。マレー系の女性マッサージ師が現れた。

「Which do you like BaliStyle or OrientalStyle?」(バリ式マッサージとオリエンタル式のどちらがいいですか?)

と聞かれたのでどう違うのかを聞くと、バリ式はオイルマッサージで、オリエンタル式は

「指圧ね」

ここに座って足をマッサージしてもらう。と、日本語で答えられた。男はオリエンタル式を選択した。まずイスに座っての、足裏マッサージから始まるようだ。彼女は山のように盛られた塩をつかんで、ガシガシと足をマッサージし始めた。荒塩なのだろうか、大き目の粒子がツボを刺激して気持ちがいい。よくテレビで見かけるような、ハードな足裏攻めはしないが、軽い指圧でのけぞるほどの痛みを感じたので、男は本場の足裏マッサージでなくてよっかたと神に感謝した。

 足が終わると、ベッドに寝そべるようにうながされた。いよいよ本番の全身マッサージだ。男がベッドに乗ろうとすると、

「No,no.Take off.」(ダメダメ。水着を脱いで)

といわれてしまった。やはり素っ裸でマッサージは受けるものらしい。彼女はバスタオルをついたて代わりにして横を向いていたが、局部を完全に隠しながらベッドにうつぶせになるなど不可能に近く、このとき男が

これで身も心もテイクオフ!

と、わけのわからん開放感に浸っていたかどうかは定かではない。

 オリエンタルマッサージは全身も塩を使って行われるらしい。首、肩、背中、腰と、痛気持ちいい気分がたまらない。今遠巻きに男の写真を撮れば、よくある構図の写真になっていたであろう。マッサージは入念になされた。体の隅々にまで手が届く。上半身が終わると、今度は下半身である。足首からふくらはぎ、大腿部へと進み、男のでん部に手がさしかかったその時であった。

がっ!!・・・・・あぐううう〜・・・・・※%$’#”$&&!!!!!!

男は突然の衝撃に絶叫しそうになった声を噛み殺した。マッサージ師の手が、肛門を通過したのである。男の肛門は、朝の用便でヒリヒリしていた。そこに荒塩が容赦なくこすり付けられたのである!そんな男の激痛を知ってか知らずか、マッサージ師の手刀は容赦なく男の肛門になで付けられた。1回、2回、3回、4回。そのたびに男は網にかかった新鮮な魚のように飛びはねそうになったのだが、ぐっとこらえた。そこには足裏マッサージ時に神に感謝したことを後悔している男がいた。最後の最後にとんでもないアクシデントに見舞われたが、なんとか1時間のマッサージは終了した。

 男はホテルへの帰途、内股で歩くことを余儀なくされた。夢に見たスパ。南国の象徴であるスパ。そんなセレブな世界は、荒塩によって無残にも打ち砕かれたのである。だが意外なことに、翌日男が目を覚ますと、尻のヒリヒリはまったくなくなっていた。驚いたことに、肛門は回復していたのである。まさに

「東洋の神秘!」

と男が思ったかどうかは定かではない。

どんどんつづく

(2004年10月3日)

 

 

 

 

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