まあ説明するまでもないほどの国民的ロボットアニメですよね。作品自体は1979年のもので、正確には70年代アニメなんですけど、世の中に大きな影響を与えたのは間違いなく80年代だと思われます。リアルタイム放送ではイマイチ人気が出なかったけど、再放送で火がついて一大ブームになったという、珍しいブレイクをした作品です。

 私がその存在を知ったのは1981年で、小学4年生のときでした。おそらく一つ上の兄の影響だとは思うのですが、アニメが先だったか、プラモデルが先だったかはよく覚えていません。ただ強烈にインパクトがあったのが、ザクのモノアイ(単眼)と動力パイプでした。それまでのロボットアニメでは、目が二つあるというのが当たり前で、子供心にもそれ以外の選択肢は想像すらしませんでした。『ガンダム』以前のロボットアニメというと、『マジンガーZ』『ゲッターロボ』『勇者ライディーン』『コンバトラーV』といったものが有名ですが、まあ総じて目は二つです。この常識を打ち破った一つ目というデザインが斬新すぎて、かなり衝撃を受けた覚えがあります。また、そのモノアイが左右に稼動するという発想も仰天モノで(笑)、ロボットに実用性を持たせているデザイン的演出が秀逸でした。実用性という演出では動力パイプも同様でして、「物理的な必要性は子どもだからよく分からないけど、このロボットを動かすためにはこれがないとダメなんだ」という考え方を持たせるには十分なデザインパーツであり、子どもながらに「リアルな匂い」をそのデザイン性から嗅ぎとることができました。その“リアルな匂い”は『ガンダム』と『他のロボットアニメ』との差別化をする上で、決定的な影響を与えた要因だったと個人的には思います。ちなみに最終モビルスーツとなるジオングの足について、「あんなものは飾り」と切り捨てた整備士のセリフに、“非実用的なパーツを切り捨てるというリアルさ”も存分に感じ取ることができ、逆説的に実用性がフィーチャーされるという演出効果にも唸らずにはいられませんでしたね。

   

インパクト抜群のモノアイ

 

このあたりのリアリティ

 

こんなちぎられて大丈夫(笑)?

 そんな感じで私はモビルスーツのフォルムのリアリティだけでKOされてしまったので(笑)、そこから再放送されるアニメを熱心に観るという行動に移るのには、さしたる時間はかかりませんでした。アニメを観ていて一番興味があったのはやはりモビルスーツのデザインで、次々と新作を投入する、モノアイを基調にしたジオン軍のモビルスーツの虜でしたね。具体的にはグフとギャンに思い入れが強いです。グフはザクをベースにした進化型、という設定がまず魅力的だったのと、ヒート・ロッド、ヒート・ソード、5連装フィンガーマシンガンといった、バラエティ溢れる装備武器の多さもお気に入りで、特にヒート・ロッドは個性的で好きですね。ムチというある種古代的な武器が最先端のロボットに採用されているというギャップが面白かったし、古代的とはいえきちんと電磁化というハイテクを備えていること、そしてその電磁鞭が右腕の袖口に格納されていて伸びてくる、という仕組みが物理的かつ実用的なイメージを醸し出していて好きでした。機体カラーの青も男子的には魅力的だし、フォルム的にもザクがのっぺりとしている(笑)のに比べて精悍さが増しています。個人的にはモノアイ部溝中央の出っ張りにポイントがあると思っていて、この出っ張りがグフを色男たらしめていると思っています。細かいけど(笑)。また、パイロットがランバ・ラルという男気溢れるド渋キャラというのもポイントが高いです。まあ実際はその渋さを理解するのにもう少し年月が必要でしたが(苦笑)。

   

グフのヒート・ロッド

 

袖にしまいます。収納上手(笑)

 

このでっぱりが色男

 ギャンは私のベスト・オブ・モビルスーツです。ヨーロッパ騎士の鎧をモチーフにしたと思われるあのフォルムは圧倒的にかっこよくありません? 私だけ? あの菱形の頭部、シャープな十字溝を持ったモノアイ、紫をベースにしたカラーリング、ミサイル砲撃もできる円形のシールド、フェンシングのようなビームサーベルと、もう何もかもが色気に溢れています。初めてその機体を目にしたときから「これだ!」と思いましたもんね。松田聖子的に言えば「出会った瞬間にビビビときました」ってやつです(笑)。ただこちらの思いとは裏腹に、作中におけるこの機体の扱いはけっこうぞんざいであり、一発屋モビルスーツの哀しい道を歩むことになります。設定では次期量産型モビルスーツ争いでゲルググに負けた、ということになっていますが、あんなブタ鼻モビルスーツをあてがわれたら、私は拒否しますよ。あ、私がジオンのパイロットだったらという妄想ではです(笑)。「個人的にはものすごくカッコイイと思うのに、世の中的にはどうもそうでもない」というこのギャンの立ち位置は、『キン肉マン』でいうところのミスターカーメンがダブってしまいます…彼がここで出てくる意味がよく分からないという方は、是非こちらも一読どうぞ(笑)。あと機体を駆るパイロットがマ・クベというのも印象が悪いなあ。陰湿な策士じゃないですか、彼。それによってあの素晴らしい機体までが陰湿に見えてしまって…と、当時は不満でした。でも今は違いますよ。大人になるとあのキャラクターの面白さが分かってきました。「あれは…いいもの(キャラ)だ」ってやつですね(笑)。

   

ビビビときました(笑)

 

“ブタ鼻”ゲルググ

 

ゆるパーマが陰湿さを助長

 ストーリーに関しては、子ども向け勧善懲悪ではない設定が斬新でした。といっても当時はそこまで理解することもできず、勧善懲悪物に脳内変換して観ていたというのが実情です。ただバックグラウンドに歴史、文化、イデオロギー、派閥、権力、恋愛等を細かく設定していたからこそ、ここまで社会現象になったことは間違いがなく、観賞した年齢によって様々な楽しみ方ができるストーリーはかなり奥が深いと思います。事実、小学生のときに観た印象、中学生のときに観た印象、大人になってから観た印象がそれぞれ違いましたし、同じ作品なのに別角度から観ると全く違った物に見えるというような多面的表現ができる点は、それまでのロボットアニメと明らかに一線を画していました。

 そんな粋なストーリー仕立てでありながら、かつ登場するキャラクターも魅力に溢れていることが、この作品を名作たらしめています。ここで言う“魅力”とは、“現実世界にいそうな性格設定のリアルさ”による魅力でしょうか。この作品に登場するキャラクターには、“完全無欠のヒーロー”が存在しないんですね。みんなそれぞれ“強み”もあるし、“弱み”もある。特に“弱み”については主人公であるアムロの専売特許で(笑)、情けないんだけれど、それがまた人間らしくていいというか、視聴者に対して等身大なんです。だからこそリアルに感じるし共感できるという。実際、こんなに悩む主人公に出会ったことないですよ、当時は(苦笑)。まあ彼以外にも悩めるキャラは多かったですけどね。シャアも悩むし、セイラも悩む、ララアも悩む。もうみんな悩んでる(笑)。でもこの“悩み”こそがキャラを引き立たせている要因なんじゃないかなあ? ちなみに個人的にはスレッガー・ロウが好きです。飄々とした大人のまま散っていく様がカッコよすぎる…。

 劇場映画三部作も、かなり印象深い記憶があります。ぶっちゃけ映画館では観ていないのですが(笑)、その広報宣伝物を見聞きするだけで強烈なインパクトがありました。その主題歌で大きな印象を残したのが第2作『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』における『哀・戦士』です。流れるようなピアノのイントロからその哀愁感で心を鷲掴みにし、静的A〜BメロからループしたAメロでロックテイストに転換していき、激しい動的サビにつなげるというドライブ感は子ども心にも深く突き刺さり、今でもジャブローの戦闘シーンでこのイントロが流れると体が震えてしまうほどです(笑)。『ザ・ベストテン』や『トップテン』でも10位くらいにランクインし、スタジオで熱唱する井上大輔を楽しみに見たものです。映像やポスターでは、第3作『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙(そら)編』の、首なしガンダムが天に向かってビームライフルを撃つ構図がたまらなくかっこよくて(笑)。このシーンをポスターにチョイスした制作サイドのセンスには脱帽ですね。ちなみに第3作の主題歌『めぐりあい』も『哀・戦士』に負けず劣らずの名曲です。

 この作品がもたらした社会現象の象徴としては、やはり『ガンプラ』の存在は外せません。ブームの加熱で商品の需要と供給のバランスが崩れ、品薄状態がデフォルトになってしまうほどでした。それゆえ争奪戦が白熱し、あるデパートでは商品にむらがった客が、エスカレーターで将棋倒しになったこともあります。「今度の金曜日に、あのおもちゃ屋でガンプラが入荷されるらしいぞ」なんて情報が入ると、両親や祖父母に並んで買いに行ってもらうなんてことも多かったのではないでしょうか。そして商品知識の浅い親が本意ではないモビルスーツを購入してきて、「これじゃない!」と子どもが泣き叫ぶという光景もお約束でした(笑)。もっとひどいのは、ガンダムシリーズですらないプラモを、じいちゃんあたりが買ってきたときです。「じいちゃん…そもそもガンダムじゃないよ…」みたいな(笑)。

 幸いなことに私はそういった経験はなかったのですが、よく聞く話です。このようなことはアイテムがガンプラじゃなくても、いつの世にもあることですけどね。ちなみに私は“並んでまで買う派”ではなくて、“運良く残った残飯狙い派”でした(笑)。それゆえお目当てのプラモはなかなか購入できなくて、ゴッグとかジムとか、主ラインから少しズレたもの(笑)を購入したりしたのですが、それでも楽しかったですね。小4でも説明書を読めば造型は可能でした。でも難しくて無理、という友達もいて、『Gアーマー』を代わりに作ってあげたこともあります。ただ偶然作ることになった『Gアーマー』、プラモデルとしてあまりの出来の良さに感動した覚えがあります。この『Gアーマー』はガンダムをコアとし、その前後に装甲を装着した戦闘機なのですが、装着の仕方で様々なスタイルに変形できるんですよ。このギミックがまあ良くできていて、バンダイの設計職人のプロ魂に齢10歳ながらいたく感心しましたね(笑)。1/144のガンダムがまるっと付属しているパッケージにも、他にないお得感やバリュー感を感じることができました。おかげで依頼された友達に「できた」と納品(笑)するときの後ろ髪の引かれ具合ったらないですよ。「このまま手元に置いときてぇ〜」みたいな(苦笑)。

   

これだけ揃って千円です

 

こんな感じで合体

 

なかなかカッコイイ

   

ガンダムの良さを殺している感じが(苦笑)

 

Gファイター

 

Gブルだったかな? いろいろ変形します

 レギュラーモデルから派生したシリーズなんてのもありましたね。「MSV(モビルスーツ・バリエーション)」といったものです。専用機や試作機といった位置づけの、ハードディティールを売りにしたもので、これを見ても『ガンダム』という作品が深掘りされて、世界観が広がっているのを感じました。特にザクのバリエーションがすごくて、様々なシチュエーションに特化したタイプが発売されました。これはメカニカルデザインを担当した大河原邦男氏の趣味が全開になっていた感じです(笑)。バンダイとしても出せば売れる時代だったから、様々な冒険ができたんでしょう。参考資料として当時のバンダイのカタログが発掘されたので(笑)、掲載しておきます。

 ただ子ども心にも「これはないだろ」というシリーズがありました。ズゴックやアッガイといった水陸両用モビルスーツの亜流である、アッグやジュアッグといった、いわゆる“アッグシリーズ”といわれるモビルスーツ群です。一応裏設定状のモビルスーツということになっているのですが、ちょっとデザインが前衛的すぎて私には理解できませんでした。個人的にはパチモノを匂わせる正規版というイメージがあり、もしオモチャ屋の棚にこれらが残っていたとしても、手に取ることはあるまい、と感じたシリーズです。とくにゾゴックとかひどい(苦笑)。出しゃ売れるから、という感じで企画されたのかなあと、大人の事情を推測してしまいました。そういう意図はなかったのかもしれませんがね。

   

アッグです。ブサイク。

 

ジュアッグはまだマシかな?

 

中国臭がすごいゾゴック(笑)

 プラモを作ることはとても楽しかったですが、モデラー的な感じまでのめり込むことはなかったですね。基本的に彩色しなかったですから(苦笑)。何度かトライしたのですが、どうしても汚くなっちゃう。乾く前に触って指紋がついたりして(笑)。「こりゃ向いてないな」と諦めました。塗料とかうすめ液とか買うのも面倒くさかったですし。何色と何色を買わなきゃいけないんだ? みたいな。でもメーカーもそれを見越して3色パックのキャラ専用カラーなんかを売り出してましたね。小瓶の使い切りセットで、グフの彩色にはこれ、といった感じの商品です。うまい商売だなあと子ども心に感心しましたよ。そんな感じだから、当然ウェザリングなんてできないし、パテとプラ板で改造するなんてこともありませんでした。それだけにそういったことができる人はすげぇなあと、素直に感心したものです。そんな思入れの深いガンプラですが、その末路は爆竹で爆破、なんてこともありました。子どもって残酷(苦笑)。

  大河原氏作のザク。メタル感がすごい。

 また、ガンプラといえばコミックボンボンで連載されたガンプラマンガ『プラモ狂四郎』も思い出されます。連載初期くらいしか読んでいないのですが、仮想空間に自作プラモを連動させ、それを操縦してライバルとバトルをする、という設定に夢があって良かったです。なんかこれってもう現実で出来そうですよね。VR技術を駆使して。強烈に印象深いのが、「1/144スケールのザクは足首が曲がらない弱点がある!」という設計上の特徴を逆手に取ってバトルに勝利する、といった感じの話です。モデルの物理的特性にフォーカスした描写に新鮮さを感じましたねえ。

 造型以外の創作活動としては、模写をかなりしました。でもガンダムの顔って難しいんですよ。ガンダムの顔パーツを分解すると、まず頭頂部の四角い出っ張り、赤いダイヤがついたV字の角、その下の野球帽のようなひさし、両目、目の下の赤い層、二つの“への字”口、赤いアゴ石、両耳の排出口、といった感じです。これら複雑に組み合ったパーツをバランス良く配置するのは、小4男子にとっては難度Dでした。どれかが少しでも崩れると、とたんにブサイクガンダムになっちゃう(苦笑)。特に苦手だったのが、両耳の排出口です。カタカタしていて面倒くさいんですよ、あれ。そのあたり、当時の自由帳を見ると「苦戦しているなぁ」というのがよくわかります。下に当時の模写をあげておきますので、興味があったらご覧ください(笑)。

 しかしあれだな、ギャンがベスト・オブ・モビルスーツと言っておきながら、ギャンの模写が少ないですね。ライバルのゲルググの方が多いという。何でだろう。よく覚えていません(笑)。足つきジオングはTV版ストーリームックに大河原氏が描いたものの模写ですね。いわゆる“パーフェクト・ジオング”ってやつです。足つきのイメージを膨らませたジオングって、このイラストが元祖なんじゃないかな。あとガンプラのパッケージ模写も好きでしたね。端っこにパイロットのイラストをわざといい加減に描いて友達を笑わす、ということが好きでした。くだらないなあ(笑)。

 クラス全体でブームになっていたので、“ガンダムごっご”なる遊びも行われていました。各々が好きなモビルスーツになりきって、連邦VSジオンでチャンバラじみた戦闘ごっこを行うのですが(笑)、そのフィールドが分譲住宅建築中のエリアでした。当時はどんどん新興住宅地が増えていた頃で、武器や防具になりうる木材が多数転がっていたんですよ。それを勝手に拝借してチャンバラを行うという迷惑千万な遊びです(苦笑)。今考えるとよくそんなことできたな、と思いますよ。大工のおっちゃんとかに怒られた記憶がないので、作業の休日を狙って遊んでいたのかもしれません。でも「あれ? あの木材どこいった?」なんて会話があったのかもしれないことを思うと、正直お詫びの心しかありません(苦笑)。こめんなさい。

 こんな感じでアニメ、プラモ、マンガ、模写、ごっこ遊びと、考え得るすべての遊びのバリエーションをしゃぶりつくした私のガンダムブームは、『キン肉マン』というコンテンツに取って代わられるまで続いたのでした。この『キン肉マン』と『少年ジャンプ』への情熱が長く続いたため、次作の『Zガンダム』以降の作品についてはほとんど観ることなく現在に至っています。ですので、数多のガンダム作品はあれど、やはり私の中で『ガンダム』といえば、このファーストが同義となります。でも時間があれば、それ以降の作品も観てみたいなと、この文章を書いていて感じましたね。

(2018年6月3日)

 

 

 

 

 

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