中学生の頃でしたが、丸文字というものが女子の間でえらく流行った時期があります。特徴としては、文字の鋭角な部分をあえて丸くし、全体的にやわらかく、可愛らしい印象を与える文字です。また、「か」や「お」といった文字の、脇の「ヽ」を本体に交差させるというのも顕著な特徴でした。

 このような文字の発祥がいつの時代からなのかはよくわからないのですが、80年代中期に加熱していた文化なので、この時代のムーブメントといってもいいのでしょう。

 はっきり言うと、私はこの文化を毛嫌いしていました(笑)。表だって口には出しませんでしたが、隣に座っている女子がこのような文字でノートをとっていることに、深い嫌悪感を抱いていたのです。その理由は主に以下のようなものです。

@まず読みにくい(=実用的とは思えない、文書の場合受け手が苦労する)
Aかわいけりゃなんでもいいのか(=かわいいは免罪符じゃない)
B周りのブームに迎合しすぎるな(=主体性をもってくれ)
C「こんな字を書く私、かわいいでしょ」アピール(=あざとくて逆に腹立つ)
D正規文書(テスト等)で使うな(=オン・オフでけじめをつけてくれ)

どうです。昭和頑固オヤジを大幅に味方につけるような(笑)、頭の硬い視点での嫌悪感でしょう。余談ですがこれに似た感情をLINEにも抱いています。ベクトルは少し違いますが。あらためて頭硬いでしょ、ボク(苦笑)。

 デザイン的には前述した「ヽ」を本体に交差させる点が特に不快で、何度「交差させんなや!」と言いそうになったことか。個人的にはこの交差こそが丸文字の象徴として捉えていました。そうです、諸悪の根源です(笑)。一番許せなかったのが、男子でこれを使い始めたやつがいたときですかね。女子への迎合というか、「キミたちのセンスは僕も理解できる」みたいな、あからさまなポイント稼ぎが鼻につきすぎて、そこまでして女子に気に入られたいのかと、とことん問い詰めてやりたくなりました(笑)。

 しかし流行の波に抗うことはとても難しく、この丸文字ブームは思春期女子をあっという間に席巻してしまいました。おかげ様で当時の文集とか、大変なことになっています(笑)。まあこれはこれで懐かしい思い出なんですけどね。

 こんな感じで丸文字に対しては否定的な思い出しかないのですが、この年になってあらためて考えてみると、当時は見えなかった肯定的な評価が見えてきたりします。よくよく考えると、あれって「フォント」なんですよね。テキストをPCで入力することが当たり前になった昨今、そのテキストをどのようなフォントでプリントアウトするのかは個人のセンスによるところが大きく、そこに個性がでると思うんです。明朝体を使えば真面目なしっかりとしたイメージになるし、ゴシックを使えば強調的になる。そのように、デザインによって読み手に違った印象を与えるのがフォントであり、イコール自己表現の一端なわけです。

 そう考えると、丸文字は「かわいい紙面を形成したい」「読み手にもかわいいと思ってほしい」という自己表現・欲求を満たすために、本来ならば写研やモリサワがやるべき仕事を女子学生自身が行っていた、ということになります。いうなればフォントデザイナーですよね。こういった視点から考えると、実は彼女たちはすごいなと思えてくるわけです。あの人たちオリジナルでフォント作っちゃったよ、みたいな(笑)。男子学生にはまず起きない発想だし、それを実行する行動力もないでしょう。

 やったことないので想像なんですが、おそらくあのフォントを駆使して文字を書くのって、なかなかの労力だったと思うんですよ。だって普通に文字を書くより気をつかうじゃないですか。理想とするデザインに近づけることを意識しながら一文字一文字書くわけでしょ? いうならば明朝体そっくりのデザインを意識して文字を書く、みたいなことじゃないですか。やってられないでしょ、実際(苦笑)。でも彼女らはそれをやったわけです。「かわいいのがいい!」という自己表現、自己実現のために。これはね、敬服に値しますよ。すごい意志力です。当時は一方的に嫌悪してゴメンネ(笑)。

 でもね、オン・オフの使い分けだけはきっちりとやってほしいです。それができる丸文字使いだったら完璧です。そのギャップに多くの男子がシビれますよ、きっと(笑)。

(2015年11月21日)

 

 

 

 

 

  

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