いつもの土曜のお昼時。私は学校から帰宅し、共働きの母が用意してくれていた昼ごはんをパクついていました。そうなんです。週休2日が当たり前となった昨今ですが、80年代はまだまだ週休1日の時代。親も仕事に行くし、小学生は3時間授業、いわゆる「半ドン」というのが世の常識でした。この「半ドン」という文化こそが「今日は土曜日なんだな〜」という曜日意識を強烈に後押しし、「午後は何して遊ぼうかな〜?」というワクワク感を演出していた記憶がありますね。

 そんなワクワク感溢れるまったりとした時間帯に飛び込んできた映像はあまりにも衝撃的で、今でもしっかりと脳裏に焼きついています。何気につけたテレビでは『独占!女の60分』という、女性リポーターが社会風俗を取材して紹介する人気番組が放送されていました。ブラウン管から流れ出たその映像は…若い女性ウェイトレスが裸で接客をする姿でした。飲食店で接客する人間が、ほとんど服を着ていないという非日常的な映像。それをニヤニヤしながら楽しんでいる男性客。このなんとも享楽的で背徳感のある映像に、食べていた昼飯を吹き出しそうになりました。「なんだこの空間は? どうなっているんだ? 何が起きているんだ?」という回答を得るのに私の知識や経験はあまりにも幼すぎ、ただいたずらに芽生え始めた性への興味を大きく刺激するばかりでした。

 ノーパン喫茶。それは80年代に入り、一気に爆発した新手の性風俗でした。短いスカートのみを身に着けたほぼ裸のウェイトレスが接客を担当し、客がコーヒーを飲みながらそれを見て楽しむというなかなかに下世話なサービス業(笑)。これが当時の日本を駆け巡り、ご当地ならではのアレンジを加えて全国に大流行したわけです。それが不道徳だとか不潔だとかはどうあれ、世の中にそのような需要があったということは厳然たる事実です。

 『独占!女の60分』における詳細レポート(笑)で、世の中にはこのような世界があることを知った少年は、大人社会の情けないほどに汚らわしい実態に落胆すると同時に、いい映像が見られて儲かったなあという心の奥底に生じた確かな満足感を得ていたのでした(笑)。私はこの衝撃的な事件をさっそくクラスの男子に流布したところ、同じように性に目覚めていた連中が大きく興奮をし、次の土曜日にはうちに集まって、『独占!女の60分』をみんなで鑑賞しようという企画が立ちあがたったのです。正直、ノーパン喫茶の紹介が再度都合よく放送されるかはわからないし、確率的にはかなり低いにも関わらず、少年たちの募り始めた興奮と期待感はそんな確率論をかるく凌駕し、次の土曜日には6〜7人のギャラリーがうちに集まったのです(苦笑)。そしていざチャンネルをあわせると…! なんと今回も見事にノーパン喫茶情報を流してくれたのです、『独占!女の60分』は! 視聴者のニーズをものの見事にすくい取った、当時の番組ディレクターのなんたる慧眼。少年たちの願い・欲望は天の通ずるところとなり、カルチャーショックを受けた彼らは、その興奮状態のまま駅前の本屋へエロ本覗き見ツアーを敢行するというポジティブ(笑)アクションを起こすこととなるのです。この当時のありさまは、『オレ流波瀾万丈』コンテンツ内の『エロ本探検隊』に詳しく書いてありますので、興味のある方はどうぞ。

 ノーパン喫茶で記憶に残っているエピソードはもう一つありまして、それは隣のクラス担任の福田先生(男性・仮名)が、自身のノーパン喫茶体験談をクラスのみんなに披露したという話です。「世の中がいろいろ騒いでいるけど、行ってみたらたいしたことなかったよ」という冷静な感想を述べただけらしいのですが、それでも現代教育現場では考えられないような衝撃的事件ですよね。まあそういうことがまだ許されるいい時代だったんでしょうけど。個人的には「ちきしょー、隣のクラスのやついいな!」という悔しさがあったのは事実です(笑)。おそらく福田先生的には浮足立った享楽的世相に対し冷静なフタをする、という目的で話したのかな? と理解していますけどね。といいつつ先生には申し訳ないですが、本当はエロ的興味もあったんでしょ? 大人ってけっこうダメだなあ、とも感じましたけどね(苦笑)。

 そんな感じで子供の世界にも大きな影響を与えたこのノーパン喫茶ですが、個人的には新たなる性の萌芽を促進させたという点と、大人ってみんな偉いと思っていたけど、実はけっこうダメだなと初めて気づかせてくれた点が大きな影響力でしたね。大人の弱さを一つ覗き見しちゃったというか。でもその事実にそれほど幻滅することもなく社会の裏側を吸収できたと思うので、清濁あわせ飲む精神的成長という点ではスムーズなステップアップだったと思いますね。

(2015年9月5日)

 

 

 

 

 

  

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