80年代は角川書店が展開するメディア戦略が花開いた時期でした。それは当時のサブカル市場に大きな影響を与え、庶民娯楽コンテンツとしてはかなりメジャーな展開をしていた記憶があります。。

 その戦略はメディアミックスといわれるもので、基本となる角川書店発行の小説を実写映画化し、そこでアイドル寄りの新人女優にその主題歌を歌わせることを含めてデビューさせるといったものでした。簡単にいえば小説、映画、音楽という3つのメディアを主体に荒稼ぎしてしまおうというものです(笑)。そこからさらに写真集やらなんやらと派生していくわけです。小説という大きなバックボーンを持つ角川書店ならではの強みを活かしたスキームですよね。

 その企画でデビューしたのが薬師丸ひろ子、原田知世、渡辺典子といった女優陣です。先に書いたように、彼女らは女優というよりは、多分にアイドル歌手としての要素を多く持っており、角川書店のメディアミックス路線のキーポイントでした。当時は松田聖子を皮切りにしたアイドル全盛期であり、ただのアイドルとして売り出したのでは埋没しかねません。そこに映画としては本格ブランドである角川映画の女優としてデビューするという箔を付け、他のアイドルとの差別化を図ったわけです。

 この戦略はもののみごとにハマり、世間は彼女らを「映画に挑戦したアイドル」視点ではなく、「女優が歌も歌っている」という視点から見ました。結果的に同じことなんですが、後者の方がより高尚なイメージを醸し出しますよね。しかも当時のアーティストと同じ路線でベストテンといったようなテレビの歌番組にはあまり登場させずに、露出を控えてミステリアスさとキャラクターの商品価値を上げていくという戦略をとりました。遮蔽物をあえて与えることで、視聴者を映画館に誘導していったわけです。

 特に薬師丸ひろ子は歌も抜群にうまかったので、この戦略はツボに入った感があります。原田知世など、自身のデビュー映画である『時をかける少女』のエンディングにおいて、共演者を巻き込んでデビュー曲である同名の『時をかける少女』を披露しています。共演者にとっては迷惑とも思われる(笑)この売り出し方にも、角川メディアミックス戦略の徹底を垣間見ることができ、しつこさを通り越して「すげえな」というある種の尊敬を感じさせるとともに、あざとさを含めて80年代らしいなあと微笑ましくもなります。ちなみに原田知世はいうほど歌がうまいとは思いませんでしたが、その後ボサノバチックな彼女なりの「知世節」を確立したことは個人的に評価が高く、オンリーワンないい歌手になったと思っています。

 角川映画はアニメ方面でも多大な影響力を見せています。『幻魔大戦』や『カムイの剣』、『時空の旅人』といった作品が個人的には印象に残っています。内容も骨太なものが多く、実写映画と遜色のない芸術性が見てとれます。現代のアニメと比べるとアニメファンに媚びたようなところがあまり感じられず、萌えも巨乳も排除された硬派的な作風(まあ当時萌えは文化として出現していませんでしたが)に違いの一つを感じます。成人がアニメ映画を観るという後ろめたさをあまり感じさせることのない作品群、というイメージがあり、現代でもこういった雰囲気のアニメ作品があればなあと思う次第です。

   

 個人的には角川映画が大掛かりなプロモーションを打つたびに世の中がにぎやかになっていたなあという記憶がありますね。その度に今度はどんな娯楽を提供してくれるのだろうといった期待感というか、ワクワク感が子供心にも感じられた時代でした。

(2015年7月19日)

 

 

 

 

 

  

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